チェスはルールさえ知っていれば年齢や性別、言葉の違いに関係なく楽しむことができるボードゲームです。
自分で対局すること自体がとても面白いものですが、チェスに関する様々なニュースに注目したり、歴史を学んだりすることでより深くチェスの世界を味わうことができます。
ぜひこの機会にチェスの世界に目を向け、対局とは違う面からもチェスの魅力に触れてみてはいかがでしょうか。
チェスはルールさえ知っていれば年齢や性別、言葉の違いに関係なく楽しむことができるボードゲームです。
自分で対局すること自体がとても面白いものですが、チェスに関する様々なニュースに注目したり、歴史を学んだりすることでより深くチェスの世界を味わうことができます。
ぜひこの機会にチェスの世界に目を向け、対局とは違う面からもチェスの魅力に触れてみてはいかがでしょうか。
「コンピュータはチェスの世界チャンピオンに勝つことができるのか」
これは1900年代にはきわめて興味深い話題であり、技術者たちがさまざまな工夫を凝らして強いチェスコンピュータの開発に取り組みました。
長い挑戦の末、コンピュータがチェスの世界チャンピオンに勝ったのは1996年のことです。
IBMが開発したコンピュータであるディープブルーが、史上最年少世界チャンピオンでありその後15年の間世界チャンピオンに君臨し続けた伝説のチェスプレイヤー、ガルリ・カスパロフを相手に6戦して歴史的な1勝を収めました。
そして翌年には同じくディープブルーがカスパロフに勝ち越し、この結果をもって世間ではコンピュータがチェスの世界チャンピオンを超えたといわれるようになりました。
今でこそチェスよりも局面数が多く複雑とされる将棋や囲碁でさえもコンピュータがトッププロを圧倒することが当たり前のように受け入れられていますが、この時のチェスにおけるカスパロフとディープブルーの対戦が、その後の人口知能の急速な発展に非常に大きな貢献をしたといっても言い過ぎではないでしょう。
しかし一方で、かつてはスーパーコンピュータを使って行っていた規模の演算と同等の結果をスマートフォンで手軽に得ることができるようになったことで、これを不正に利用しようという誘惑が生まれてしまいました。
2019年のストラスブール・オープンにおいて、イゴール・ラウジスが試合中に隠れてスマートフォンを使用したことによりグランドマスターの称号を剥奪されるという事件が起こりました。
これは「コンピュータが人間のトッププレイヤーに及ばない」時代であれば起こらなかったはずの悲しい事件ともいえるとともに、技術の進歩にはそれを扱う人間の成長も必要なのだという教訓でもあります。
もちろん、コンピュータが人間の技量を上回るようになったとはいってもそれをもって人間が行う競技が無意味になるわけではありません。
カスパロフは人間とコンピュータがタッグを組んでゲームを行うアドバンスドチェスというスタイルを考案しました。
これはコンピュータと人間が戦う時代から共存する時代への移り変わりを象徴する、新しい時代を目指すための試みといえます。
また、アプリを使って簡単に世界中の人と対局することが可能になりましたが、最近では「自動で駒が動くチェス盤」も開発されています。
多彩なエフェクトや効果音に彩られたゲーム画面上ではなく、本物の盤上の駒が遠く離れた相手の指し手通りに動いて対局が楽しめるというのには大変趣深いものがあります。
技術革新による原点回帰と呼べるのではないでしょうか。
今後も新しいチェスの世界がコンピュータの発展によって開かれ、その魅力がより深まっていくのかもしれません。
人間の相手としてチェスを指すことができる機械人形のことをオートマタと呼びます。
歴史的に最も有名なオートマタは18世紀に実在し、「The Turk」です。自分で考え、実際に駒を動かしてナポレオン・ボナパルトやベンジャミン・フランクリンにも勝利した「The Turk」は当時の人々を驚かせ、世界中で大きな注目を集めました。
しかし実際にはこのオートマタは内部が空洞になっており、中に隠れた人間が操作していたことが後に明らかになりました。
時は流れ現在、技術は進歩し人間を打ち負かすAIが誕生し、コンピュータの思考に従って駒を動かすロボットも現実のものとなりました。
2022年にモスクワで行われた大会で7歳の少年と対局していたロボットが誤って少年の指を掴んで骨折させてしまうという事件がありました。
チェスのプレイについては完全にこなせるほど進化したオートマタでもゲーム以外の部分で予期しない事態に対応できずに人を傷つけてしまったということは、技術の進歩と共に生じる新たなリスクを浮き彫りにしました。
近年、人工知能は急激に進歩し、一昔前には考えられなかったことが次々に実現されています。
オートマタも今や未知の超技術ではなくなりました。これからは技術の進歩を夢見るだけでなく、それがどんなリスクを秘めているかを考えて安全性や倫理的な問題に注意深く取り組むことが、人間と機械が安心して共存できる未来を造るために重要なのではないでしょうか。
チェスに限らず、スポーツは同じルールの下で人種や宗教の壁を越えて世界中の人が同じように楽しむことができるものです。
オリンピック憲章においても政治的、宗教的、人種的な宣伝活動を行ってはならないとされています。
しかし現代においても、しばしば宗教的な問題によって純粋なチェスの楽しみが阻害されることがあるのは憂慮すべきことです。
象徴的な問題としてイランにおける大会出場者への「ヒジャブ」の着用義務問題があります。
ヒジャブはイスラム教徒の女性が宗教的な理由で頭を覆うために用いるスカーフです。
イランでは、国内で開催される世界大会参加者にヒジャブの着用を強制しているとされ、これに従わない場合には出場を認められなかったり、トッププレイヤーが世界大会への出場を辞退したりする問題がたびたび起こっているようです。
自国選手のユニフォーム的な意味合いであれば宗教的な装いを強制することも許容される場合があるのかもしれませんが、この純粋に宗教的なルールを他国の選手にも適用することは宗教の強制であって国際的な大会を主催する立場としていかがなものかとして批判されています。
また2016年にはCNNが、サウジアラビアのサウジアラビアの高位イスラム教法学者による「チェスはイスラム教では禁止される」という見解を示したと報じました。
しかし翌2017年にもサウジアラビアでは世界大会が開催されていますので、厳密にチェスを禁止するほどの強制力のある統一見解ではないのかもしれませんが、国に深く根差した宗教上の問題によって安心してチェスを楽しむことができないのは残念なことです。
サウジアラビアにおいては女性が外出する際アバヤと呼ばれる民族衣装を着用することが義務付けられていますが、2017年の世界大会では大会参加者への服装規定が緩和され、近年では高位の聖職者が女性にアバヤの着用を義務付ける必要はないとの見解を示し、ドレスコードについて緩和しようとする動きが出ています。
一方、2017年の世界大会では政治的な問題によってイスラエルの選手に対するビザが発行されず、大会に参加することができませんでした。
宗教や国家の対立は簡単には解決することのできない問題ではあるものの、そういったことに煩わされずに誰もが平等に安心してチェスを楽しむことができる世界になってほしいものです。
チェスには長い歴史があり、現在のルールは世界共通です。ルールが共通だからこそ、その実力を競うための大会を行うことができ、たくさんの人が安心してチェスに打ち込み、楽しむことができます。
しかし、チェスはその起源とされるチャトランガから派生してヨーロッパを中心に成長したものが現在の形で定着したものであり、同様にチャトランガが起源とされ日本で進化を遂げた将棋とはルールも駒の動きも、盤の広さも異なります。
現在の形のチェスが歴史的に一つの完成形であるとしても、その基本的な要素を使って更なるバリエーションに富んだゲームを行いたいという試みは多く存在します。その一つが変則チェスです。
変則チェスとは、チェスのルール・駒・盤を一部変更したチェスのことであり、フェアリーチェス(Fairy Chess)とも呼ばれています。
変則チェスの中にもさまざまな種類がありますが、最も単純なのがシャッフルチェスです。
シャッフルチェスではキングのある段の駒をランダムでシャッフルして並べます。ビショップについては異なる色のマスに置きますが、キャスリングはありません。
1970年代の世界チャンピオンであるボビーフィッシャーが考案したフィッシャーランダム(チェス960)では、必ずルークとルークの間にキングを置くことでキャスリングを行うことができるとされていますが、キングとルークが隣り合うこともあるため通常のチェスのキャスリングとは少し異なります。
変則とはいえ、フィッシャー・ランダムは世界選手権も行われており、根強い人気があります。
伝統的なゲームのルールを変えてしまうということに抵抗を感じる人もいるとは思いますが、史上初の永世七冠の資格を獲得した羽生善治はコンピュータによって将棋が解明されたらどうするかという問いに対して、「そのときは桂馬が横に飛ぶとかルールを少しだけ変えればいいんです」と答えたといいます。
ゲームのルールが不変であることが絶対の価値観ではないと気づかされる、その道の頂点を極めた人の言葉だからこそ重みのある言葉です。
余談ですが、将棋においても駒の動きを変化させた八方桂(桂馬がナイトと同じ動きをする)などの変則将棋がいくつかあります。
なおこのサイトのトップページではシャッフルチェスで遊ぶことができますので、ぜひ試してみて普段と違った感覚を楽しんでいただければ、と思います。
人間を相手にチェスを楽しむ最も簡単な方法はオンライン対局ですが、実際に盤面を挟んで向かい合ってする対局には、画面上で行う対局とは違った楽しさがあります。
身近にチェスできる友人がいればよいものの、これからチェス仲間を見つけようとするとなかなか難しいかもしれません。
囲碁や将棋であれば学校の部活動としてもメジャーな方かもしれませんが、チェス部がある中学や高校となるとかなり珍しいのではないでしょうか。
チェスをするためのチェスセットはインテリアとして楽しむこともできますが、対局相手のあてがないのにまずチェス盤と駒を揃えるというのも勇気がいりそうです。
全国にチェスクラブがありますが、やはりプレイヤーの人数からいってどうしても限られてきます。
残念なことに、2018年1月28日には東京チェスセンターが閉店しました。
そしてさらには1967年から日本のチェス会をサポートしてきた日本チェス協会でさえも活動を終了しました。
日本チェス協会については、活動を引き継ぐ形でNational Chess Society of Japanが設立されて国内のチェス大会の開催などを行っていますが、こうした長く活動していた団体が活動規模を縮小していく中にもチェス人気の低迷を見るように思い、寂しい気がしてしまいます。
とはいえ、チェス専門ではなくとも、ボードゲームの一つとしてチェスが用意された公共スペースはいくつかありますので、こうしたお店に行ってみるのも一つの手になります。
オンラインでは手軽に対局のマッチングができる分、人と人とのつながりという要素は希薄になりがちです。
せっかくチェスのルールを覚えたからには、実際にチェスを通じて相手とのコミュニケーションを楽しんでみたいものですよね。
チェスに限らず様々なボードゲームで遊ぶことができるボードゲームカフェは各地にありますので、一度足を運んでみてはいかがでしょうか。
楽しく遊んでいる人を見れば自分もやってみたくなるものです。
チェスで遊ぶ姿を人に見せることによって、日本におけるチェスの普及に貢献することになるかもしれません。